「銀河ホール」とは


「演劇のまち・西和賀」の源、劇団ぶどう座が提唱した地域演劇

 

 西和賀町には町内在住者によって戦後に結成され、約60年間活動してきた「ぶどう座」という劇団があります。ぶどう座は昭和の日本演劇を支えてきた千田是也・木下順二・ふじたあさやといった演劇界の重鎮や前進座などの劇団と連携して全国的に活動しながら、ブレヒト・スタニスラフスキー・宮沢賢治らの演劇論を用いて地域社会に密着した演劇「地域演劇」の可能性を探求してきました。創設以後60年以上にわたって劇団ぶどう座を率いてきた劇作家・演出家の川村光夫氏は、「演る者も観る者も、一定の地域に住んでいて、そのこととのかかわりで演劇を成立させ、そこから現実を開いてゆこうとする演劇行為」と、その評論集の冒頭において「地域演劇」を定義しています。

 こうしたぶどう座の活動実績は日本の現代演劇史において重要な位置を占めていると同時に、これからの芸術文化と社会の関わりを考えていく上でも大きな示唆を与えるものだということができるでしょう。

これまでのあゆみ

 

 こうした劇団ぶどう座の活動実績を大きな資本に、西和賀町文化創造館(当時はゆだ文化創造館)は「第8回国民文化祭いわて'93 —民話劇と語りの芸能—」の会場として建設されました。この催しは国民文化祭であると同時に「第1回銀河ホール地域演劇祭」として開催され、今日にいたるまで全国の地域劇団が集う演劇祭として毎年秋に銀河ホールで開催されています。

 主催事業は国内劇団の公演にとどまらず、1995年にはロシアのオムスク第5劇団を招いての「銀河ホール国際演劇祭」が開催され、ぶどう座の代表作『うたよみざる』が異なるいくつかのバージョンで制作・上演されました。さらに2001年には「国際チェーホフ演劇祭」(「国際スタニスラフスキー・アカデミーin湯田」同時開催)が開催され、夏の1ヶ月間、日本人参加者とロシア・アメリカから招聘された演出家・俳優たちが町内でWSやシンポジウム、各国語での『ワーニャ伯父さん』『桜の園』の連続上演を行いました。

 

また、全国に先駆けた高齢者演劇の実施、開館10周年記念公演としての「湯田沢内町村民交流劇場」など、町民参加型の公演も行なわれています。近年では2012年秋に「にしわが町民劇場〜秋のふるさとまつり〜」として全キャスト町民による『西和賀・町物語』が上演され、銀河ホール公演で354人、沢内トレーニングセンター公演で296人を動員しました。

2012年からはギンガク(銀河ホール学生演劇合宿事業)がスタートし、全国でも類を見ない「無名の学生・若者たちによる文化芸術の合宿」が行われています。ジャンルは演劇にとどまらず、現代美術・木工・ダンス・メディアアート・アニメーション・デザインなどと幅広く展開され、また、その創造の現場も温泉旅館・湯田ダム・学童・西和賀高校・旧小学校の校舎・町内の事業者と、参加者たちの意欲のままに町全体へと広がっています。